バロット


 日本の鶏卵は殆ど無精卵である。最近では有精卵はまず見かけれない。無精卵、有精卵の区別はいまさら言うまでもない。東南アジアでは鶏卵より、アヒルの卵が一般的であるが、このアヒルの有精卵、親鳥に抱かせると当然ながら孵化することになる。
 孵化直前、4〜5日前の卵を悪魔の人間が横取りし、ボイル(蒸す)すると出来上がるのがバロットである。孵化寸前の卵ゆえ、卵の中身は、当然ながら半ば小鳥の形態を示している。羽も生えており、小骨もあり、これを直接、エキススープとともにのみこむ(食べる)のである。一応アヒル卵ということになっているが、実際は少し小さめの鶏卵でないかと想う。東南アジア全般に見かけられるが、ことにここフィリッピンではもっともポピュラーだ。

 日本人的感覚では今一つである。けっしておいしいという類のものではない。ひよこの羽が喉にひっかかるし、小骨が舌に纏いつく。でもフィリッピンではいとも簡単にあっさりと飲み込んでしまう。このバロットは精力剤としてもちいられ、一度に十数個平らげる豪傑も数少なくない。フィリッピン人には何故日本人が敬遠するのか理解できないようだ。日本人はレアの魚肉(サシミ)を好んで食べるのに。彼らには日本人のほうがよっぽどゲテモノ好きなように映るらしい。中国の3叫といい、バロットも僕にはとうてい馴染めそうにない。


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