【バッタ屋繁盛記】

 バッタ屋とシンガポールは切っても切れない関係にある。最近見かけるガイドブックには記載されていないが、香港とちっとも事情は変わっていない。オーチャード通りを散策していたり、一流店のショウウインドを覗いていれば必ず声をかけてくる。偽物のバックは、時計はいらないかと。「ちょっとあなた、ニセモノトケイ見るだけ、ミルダケタダヨ」と。ここも香港同様関税のない自由港となってはいるが、街の綺麗さに似合わず何処か胡散臭いところがある。やはりスイスにはなりきっていない。興味半分、アンちゃんに案内されていくと、高層商業ビルの商店に連れ込まれ、店の奥は隠し部屋のごとき構造になっており、ぞくぞくと客引きに連れ込まれた日本人のお客さんがやってくる。オリジナルに比べたら値段も安いかも知れないが、同様のノーブランドの商品に比べたら決して安いものではない。いづれにしても偽物は、どんな世の中になっても消え去ることはないだろう。30年前の初めての訪問の時と事情はちっとも変わっていなかった。


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