アジアンサンドローム(グルタミンサンドローム)
味の素
最近東南アジアでは化学調味料、特に味の素が全盛である。終戦後の日本でも良く使用されたが、大量の必須アミノ酸の摂取が体に悪いことが分かり現在では自然第一で、化学調味料の使用はほぼ妥当な水準まで低下した。味の素はアミノ酸としてだけではなく、高血圧、動脈硬化症等生活習慣病の心配のある人達にとっても塩分の摂取制限と同様に制限されねばならない。この場合、塩分と味の素は同一と考えて支障ない。自然食品に神経質な日本では特殊な場合(糖尿病)を除き甘味料のチクロも厳禁されているが、東南アジアではチクロ・サッカリン等が花盛りなのだ。
ベトナムのある町で汁そばを頼んだら、具の中央に白い粉が美しい円錐型に小高く盛り付けられていた。顔を近づけてよく見るまでもなく、どうやら結晶のようで、縁起担ぎの盛り塩とかの習慣があるのかなあ。しかし、まさか汁そばで縁起担ぎなんて、と思ってさらによく見ると、結晶が細長い。覚醒剤かな、いやいやまさか、その正体は味の素(グルタミン酸ソーダ)だった。私が外国人だからというので、特別に美しく大量に盛りつけてくれたらしい。しかし、これほど大量の味の素なんて食べられたものじゃない。もし味の素なら何らかの障害を起こしかねないだろう。しかたがないので大半以上捨てたら、お店のオネイチャンたち、彼女らは悲しい顔をしていた。せっかくの好意だったから、そのまま食べるべきだったのだろうか。でも、あんなもの食べたら舌がしびれて味などわからなくなってしまうところだ。アジアの料理は味の素に支配されているようだ。タイ料理には必ず使われているし、ラオスの食堂のテーブルの上には、「ご自由にどうぞ」と置かれていた。粉末チキンスープの素を入れて隠し味にしている屋台もあったが頗る評判がよい。ホットなタイ料理を食べると全身がしびれたようになるが、それはトウガラシの刺激だけではなく過度のグルタミン酸で手足がシビレているのかもしれない。こういったものに敏感な西洋人の間には、「チャイナレストラン・サンドローム」という症状(アメリカ・ボストン)があるらしい。中華料理に入っている多量の味の素のおかげで食後にシビレが出るというものだ。タイ料理の刺激は楽しいが、こういう刺激はちょっとご辞退申し上げたい。
東南アジアでは味の素は貴重品で大変高価である。しかし、ホントのところ、大量にアミノ酸を過剰に摂取すると末梢神経炎が起こるらしい。舌の先端、両手手足の先端が痺れて感覚麻痺を起こすことは、医学的にも証明されているという。
合理的精神に慣れ親しんだ西洋人は、「いくらおいしいと言われても、食べておいしいと感じなかったら意味がない」と主張する。うーん、まったくそのとおりなんだけど、そんなものかなあとも思われる。いったい、うまいとかまずいとかいう評価の基準はどこにあるのだろう。本物と、はるかにかけ離れていても、食べる人が満足すれば、それはおいしい料理にちがいないんだろう。美味しさと食べ物の善し悪しとはまた次元の異なる話のようである。(味の素は健康に悪いことはない。学術論文で実証されていると言う意見。10/9/99)
(注) 紛らわしい書き方でご迷惑をおかけいたしました。必須アミノ酸の中にはグルタミン酸は含まれておりません。ただグルタミン酸ナトリウムのような化学調味料が東南アジアではいまだ全盛であり、身体にとっても余り良くないなあと思い書いたまでです。味の素も会社の商標であり、この会社を誹謗するつもりは毛頭ありません。でも、味の素は日本ではあまりにも有名になりすぎて、グルタミン酸の一般名詞の如き状態で、アミノ酸、あるいは必須アミノ酸の大量過剰摂取に警鐘を鳴らすつもりで書いたもので他意はありません。もちろん、味の素はアミノ酸ですから、健康阻害はないと言う意見もあるようです(fda)が大量摂取は如何なものでしょうか。持続的(長期間)摂取は問題含みではないでしょうか。ご指摘いただいた賢兄に感謝いたします。
追記:9/27/99の日経新聞(夕刊)によれば、ミャンマーの「味の素」製造工場が閉鎖されたという。政府が味の素の原料の輸入を全面禁止したことによるもので、この工場は日本の「味の素」の子会社であるタイの「味の素」会社の100%出資で出来たものであったが、ミャンマー政府が健康に被害を及ぼす懸念から、原料の全面輸入禁止に踏み切ったようだ。味の素全盛のアジアで初めてのミャンマー政府の英断に敬意を表したい。「味の素」は保守要員だけを残し、あとは全員解雇した。