ビンロウ売りの屋台(台湾)


 台北市からビンロウ(椰子科のビロウとは異なる種)が法的に規制され追放されると言う。最近では、飛行機の中でも禁煙が大流行、他人様えの健康配慮から、禁煙運動がますます盛んになり、国際線は殆ど全て禁煙となりつつあるようだ。喫煙している人の側にいるだけで、間接喫煙をすることになるようだが、思えばタバコを吸わないものにとっては、長い間、臥薪嘗胆してきたものだ。いまや、どんな会議に行っても喫煙派は少数派で小さくなってござる。チェインスモーカー(1日400本以上喫煙)であった次郎さんも10数年前、いつのまにか吸わなくなってしまっていた。

 ビンロウは咬んでいると弱い覚醒作用があり、神経は興奮状態になり元気が出ると言われる、ビンロウ樹(椰子科常緑樹)の真っ赤な実で、習慣性があり、多数の愛好者がいると言われている。老いも若きも、男も女もそのホビー者はいるものだ。

 ビンロウの習慣は、口腔癌になりえる(なりやすい)という医学界の発表を受けて、市当局は業界の猛反発にも関わらず、タバコなみに規制するという。市民の健康を守るという大義名分のもと、条例を持って規制しようとしており、18才未満のものに販売禁止、公共施設等では禁ビンロウに指定し、その包装紙にタバコ同様、健康に被害を及ぼすかもしれないと記載するよう義務づけるようだ。

 ビンロウを咬むと口が真っ赤になり、愛好者は紅唇族と呼ばれている。台湾最大都市台北でも街角の至る所に屋台があり、吐いて赤い唾で道が汚れている。ビンロウは高砂族のような先住民が習慣として咬んでいたものを、移住民族(漢民族)が真似をいていたもので、台湾の風物詩あるいは生活文化の一部とさえなっていた。特別美味なるものではなく、単なる習慣に過ぎないと思われるが、しかし、知識人からは風当たりも強かった。

 しかし、生産農家にとっては金のなる木で、生産額100億台湾円(¥360億円)を超え、台湾第4位の農産物でもある。習慣性があるので安定した収入も見込めるのも魅力だ。政府は反対論もあることだし、世論の背景もあり、奨励もしないが規制もしないと言う姿勢をとっているようだ。

 生産地でない台北市では、市民の世論を背景に、政府の出来ない規制に乗り出そうとしている。だが生産農家は、死活問題だ、我々を殺す気かと徹底抗戦の構えであるようだ。

 台湾では、このようにビンロウで物議を沸かしているが、もうすでに97年の春には、台北市の高速道路沿いの、ビンロウ売りの屋台や街中の観光理髪店は姿を期していた。なるほど街中の果物店なんかでは、今でもビンロウは売られている。ビンロウはその主成分は良く知らないが、南米のコカの葉っぱのように、中枢神経系に軽い刺激作用を及ぼし、興奮せしめるようだ。猛烈な暑さから来る全身倦怠感、これをしがんでおれば、その疲労感はとれて、少しは楽になるようだ。ミャンマーの咬みタバコ(コオン)も同様の作用があるようだ。あまり深い意味もなく、通常一般の習慣としてこれらのものが使用されているのが現状だが、根本には疲労回復強精剤としての、重要性があったに違いない。まあ、言ってみればドラッグの軽い奴と考えて差し障りのないものだろう。

 台北当局の取締も、観光立国を狙う建前上、あまりにも評判の悪い環境整備が狙いだと思わざるをえない。知っている人は、誰でも知っていたのだ。あまりにも有名すぎた。市内から観光理髪庁は完全に追放されたし、次が少女売春の根城だったビンロウ売りと言うわけだ。事実、24時間営業のビンロウ売りの屋台の売り子は、すべて幼い少女だっし、高速道路沿いのそれらの店はあまりにも有名だったし、アレと言えばビンロウ売りの屋台、ビンロウの屋台と言えばアレと良く通じたものだった。良いことは抵抗があってもやった方がよい。(7/99)


恐ろしき薬 


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