インド下痢症候群(食中毒・急性腸炎)


 一般にアジアの屋台はあまり綺麗だとは言えないようだが、はたしてその衛生状態は如何なものだろうか。湿度の高い、暑い土地柄、その屋台は汚いと来ているとしたら、もう如何せんかである。食品は腐敗の進行を早め、すぐに痛んでしまう。細菌は数時間単位で細胞分裂を繰り返し繁殖する。ご存知のように、冷凍、冷蔵の施設も乏しく、もうお手上げと言わざるを得ないようだ。かつ衛生状態は全くなっていない。洗っているのか汚しているのかさえ、さっぱり分からない状態では、不安も亢進する。

 インドで生活すれば、必ず下痢に見舞われる。これより逃れ得る人はいないというが、これはなにも水が合わないと言ったモンでなく、細菌の進襲を受けているのであり、免疫が出来るまで繰り返し、繰り返されるものだ。つまり、急性腸炎になったということだ。原因はいろいろあるだろう。細菌に汚染された水かも知れないし、食材かも知れない。あるいはまた食器等別のものからの感染かも知れない。とくに暑さに体力の衰え消耗しているときに細菌の感染があっては発症するのも当然のことだ。

 インドでは下痢するのではなく、下痢する病気になり易いのである。インドネシアから帰った旅行者にコレラ菌が見つかり、大騒ぎになったことがあったが、現地では特別発症の報告も見られなかった。現地人はコレラに免疫力があるのだろうか。日本人はあまりにも文明化され、普通一般の免疫さえも持ち合わせていないと言うことか。

 原始の昔から、大腸菌の汚染の全くないものなんて、存在しないのではないだろうか。地球上に細菌の汚染のないものは存在しないし、今はその密度が問題なだけで、大腸菌でもその細菌密度によっては腸炎を発症し得るようだし、ごく一般的な消化不良性腸炎に違いないだろう。

 食中毒と言えば、急性腸炎であり、急性腸炎と言えば食中毒である。勿論伝染病に分類されるものもあるが、全てその症状は急性腸炎である。原因となる細菌にはサルモネラ、ボツリヌス、コレラ、チフス等いろいろあるわけだが、食中毒を起すのは、その細菌密度が10〜100萬個/mlで可能であり、それ以下ではあまり問題ではなかった。つまり発症しなかったのだ。数の多さ(密度)がその発症に深く関係しているようだった。

 でも不思議な事象も見受けられる。O157と言う奴だ。こやつは100個/ml単位で発症するという。例えば浴槽でも感染するらしい。それだから水泳のプールはもちろんのこと、野外のキャンプでも感染が見られるようだ。一昨年堺で流行して全国を恐怖のどん底に突き落とした奴だ。遺伝子レベルまで解析し、その感染経路等詳細な検索が加えられたが、我々素人にとってもクレアカットな説明が欲しかった。専門家にとっては犯人像が解明されたと言っているが、我々素人にとっては決して納得のいくものではなかった。

 この細菌の逆襲は、これまでの細菌学の常識を覆し、色々医療面で問題を突きつけたようだ。いままで、あまりにも、人間の神の秩序を乱すやり方の、神の怒りかも知れないし、SF映画じゃあるまいが、かんぜんな細菌の逆襲である。O157の報告は最初アメリカよりなされたが、割合文化レベルの高いと言われている所に限って起こっており、アジアからの報告例をあまり見かけない。このパラドックスはどうして起こってきたのだろうか。不思議と言えば不思議なことだ。


※ 食中毒(時節柄急性腸炎について少しまとめてみました)

● 腸管出血性大腸菌性腸炎 O157

 大腸菌は、人や動物の腸内に常在していて、一般的には病気の原因になることはない。しかし、一部の大腸菌は、下痢を起こすなど人に対して病原性があり、これらを総称して下痢原性大腸菌と呼んでいる。その中でも、腸管出血性大腸菌は、腹痛や血便などの大腸炎を起こすだけでなく、乳幼児や高齢者では、貧血や尿毒症を併発して、命にかかわることがある。1996年の集団食中毒(堺)で有名になったO157も、腸管出血性大腸菌の仲間で、O157は、ふつう牛などの家畜の腸管の中にいることがたびたび見られる。そのふん便が食品や水を汚染することが、感染の原因につながると考えられているが、どのような経路で汚染するのかは、まだよくわかっていない。また、患者さんのふん便を介して、風呂場でも人から人に感染したり、食品を不衛生に取り扱ったために、食品から食品へ菌がついてしまい、感染が広がることがあるようだ。

【症状】
 症状としては、腹痛や水様性の下痢を主な症状とするが、虫垂炎を疑うようなはげしい腹痛と大量の鮮血をともなう下痢となることもある。まれに、下痢がはじまってから約1週間後に、急性腎炎(腎内出血)を起こし、血小板の減少、貧血などの症状を呈する溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症することがある。

1 発症菌数が非常に少ない時でも発症するようだ。通常の食中毒菌の場合、10万〜100万個以上の細菌を摂取しなければ発症しませんが、O157の場合はわずか数百個程度の非常に少ない菌数で発症すると考えられている。どのような経路で食品がO157に汚染されるのか、まだよくわかっていない。

2 潜伏期間が4〜8日と長いのでことが多い、一般的な食中毒菌であるサルモネラの潜伏期間は8〜48時間、腸炎ビブリオの潜伏期間は8〜24時間なのに対し、O157の潜伏期間は4〜8日と非常に長く、このため、原因食品・感染源の特定が大変難しくなっている。

3 感染力が強く人から人へ二次感染を起こすようだ。通常の食中毒菌は人から人へ感染することはないが、O157の場合はわずか数百個程度の菌数で発症するため、ふん便等を介して感染する可能性があり、十分な注意が必要である。菌自体は熱や消毒剤には弱いようだ。

4 熱や市販の消毒剤に弱い。O157は他の食中毒菌と同様熱に弱く、75℃、15分の加熱により死滅する。また逆性石けんやアルコールなどの市販の消毒剤でも容易に死滅する。したがって手をよく洗う、肉類は十分に加熱するなど通常の食中毒対策で予防が可能である。

● サルモネラ・エンテリティディス(SE)

 SEによる食中毒は世界的に増加しているが、わが国でも近年急激に増加し、多発傾向が続いている。SEの感染予防には十分な加熱が有効である。SEはo157と同様に熱に対しては弱く、70℃、3分間の加熱で死滅する。原因食品となりやすいものに玉子焼き、自家製マヨネーズ、オムレツなどの鶏卵食品があげられるが、卵などから調理器具や手指などを介して他の食品が汚染される場合があるため、食品の取扱にも十分な注意が必要である。 また、冷蔵庫の中などでも卵から他の食品に汚染が拡大することがあるため、冷蔵庫の管理も重要となる。

【潜伏期間と症状】
 潜伏期間:8時間〜48時間
 症 状:発熱(38℃〜40℃前後)、腹痛、下痢、けん怠感

● 食中毒細菌類

 食中毒の原因となるのは、O157やサルモネラだけではない。他にも、さまざまな細菌やウイルスが食中毒の原因になりえる。食中毒菌やウイルスごとに、原因となりやすい食品や予防のポイントが異なることがある。

その他の食中毒原因微生物の一例

腸炎ビブリオ
黄色ぶどう状球菌
ウエルシュ菌
セレウス菌
カンピロバクター
ボツリヌス菌
SRSV(小型球形ウイルス)(7/99)



屋台料理と衛生問題
O157の課題
カンボジアの腸炎

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