低用量経口避妊薬(OC)


ピルUpdated

 低用量経口避妊薬(OC)は病気の治療のため服用するのでなく、もともと健康な婦人が、長期にわたって服用するものなので、女性の健康管理の面からしても、いささかの副作用等問題点があってはならない。
 欧米では低用量経口避妊薬(OC)の服用者は多く、OCが受け入れられて久しい。わが国では本年6月2日に厚生省は初めてOCの製造輸入を承認した。これにもとずいて本年9月2日より、10社の製薬会社から一斉に発売されることになった。この薬剤は排卵抑制に必要な最小量のエストロゲンとプロゲストーゲンを用いることにより、副作用の発言を極力抑えた薬剤ではあるが、ほんとに安心してなんらの問題点もなく使用しても差し支えないものだろうか。
 9月2日の発売前にOCについて、その問題点について考えてみた。

市販低用量経口避妊薬(OC)一覧表

服用開始日

配合パターン

ホルモン量(E)

ホルモン量(P)

世代

錠数

製品名

会社名

スタート

EE(30μg):DSG(150μg)

EE(0.630)

DSG(3.15)

28

マーベロン28 日本オルガノン

スタート

EE(35μg):NET(1000μg)

EE(0.735)

NET(21.0)

21

オーソM21 ヤンセン協和

スタート

EE(35μg):NET(500μgx10)(1000μgx11)

EE(0.735)

NET(16.0)

21

エリオット21 明治製菓

スタート

EE(35μg):NET(500μgx7)(750μgx7)(1000μgx7)

EE(0.735)

NET(15.75)

28

オーソ777-28 ヤンセン協和

スタート

EE(30μg)(40μgx5):LNG(500μgx7)(750μgx7)(1000μx7)

EE(0.680)

LNG(1.925)

21

トリキュラー21 日本シェーリング

スタート

EE(30μg)(40μgx5):LNG(500μgx7)(750μgx7)(1000μx7)

EE(0.680)

LNG(1.925)

21

トライディオール ワイスレダリー

スタート

EE(30μg)(40μgx5):LNG(500μgx7)(750μgx7)(1000μx7)

EE(0.680)

LNG(1.925)

28

リビアン28 山之内製薬

スタート

EE(30μg)(40μgx5):LNG(500μgx7)(750μgx7)(1000μx7)

EE(0.680)

LNG(1.925)

28

アンジェ28 帝国臓器

sunday

EE(35μg):NET(500μgx7)(1000μgx7)(500μgx7)

EE(0.735)

NET(15.0)

28

ノリニーT28 科研製薬

sunday

EE(35μg):NET(500μgx7)(1000μgx7)(500μgx7)

EE(0.735)

NET(15.0)

28

シンフェーズT28 ツムラ

 OCの種類(日本で発売されるもの)
マーベロン28は静脈血栓症の相対危険率を増加させる報告があり、他のOCが適切ではないと判断される場合にのみ投与を考慮することとなっている。

 一般的に一相性OCの特徴は周期調節性にすぐれ、またOCに含まれるホルモン含有量がどれも同じなので、服用錠剤を間違えても問題ないという。しかし、服用周期の後半に不正出血がやや多いというデメリットが言われている。他方、多相OCは自然のホルモンパターンに似せてあるので、不正出血が少なくなる特徴がある。しかし、内服錠剤の順番を間違うと、とくに飲み忘れの時に妊娠する可能性が高くなることが指摘されている。


副作用情報

重篤な疾患

傾向

頻度

血栓症

増加

3〜4倍のリスク
心血管障害

増加

2〜5倍のリスク
脳血管障害

増加

2〜3倍のリスク
乳ガン

増加

1.24倍のリスク
子宮頚癌

増加

1.3〜2.1倍のリスク
良性肝腫瘍

増加

10万人当たり3.4人のリスク


OC服用による副効用

疾患名

発生頻度

貧血

低下

良性乳房疾患

低下

骨盤内感染症

低下

子宮外妊娠

低下

良性卵巣嚢腫

低下

子宮体癌

低下

卵巣癌

低下


OCの副作用

1 血栓症・血管障害
血栓症・心血管障害・脳卒中は重篤結果を招くことがあり、たとえ低用量化されてもその可能性は残っている。ことに、心筋梗塞や脳卒中は喫煙の影響が大きく、OCと喫煙は相乗的に増加させる。そこで、35歳以上で少なくとも1日15本以上喫煙者は服用すべきでない。その他、血管障害の危険因子として血栓症や血管障害の既往歴、高血圧、糖尿病などの代謝性疾患、40歳以上の高年齢者やリューマチ性心疾患なども要注意である。血管障害には動脈硬化も重要な危険因子で、プロゲストーゲンの脂質代謝への影響も問題である。エストロゲンがHDL-コレステロール増加作用とLDL-コレステロール低下作用を有しているのにたいし、プロゲストーゲンは全く逆の有しているのである。
2 乳ガン(乳腺への作用 )
 軽度の乳房の張りは2ー3周期後には通常消失する。ガンの早期発見に努める。
3 子宮頚癌
4 良性肝腫瘍
 良性肝腫瘍は発生しても無症状で経過するため、OCを2年間以上服用しているときは定期的な検査が必要である。一般的には肝機能障害が一過性で投与を中止すればすぐに正常化する。
5 ホルモン依存性副作用
6 不正出血(破状出血)
 2〜15%にみられる。これは特に服用の開始周期に多く、服用期間が長くなると減少する。 
7 消化器症状
嘔吐はまれであるが、嘔気は10ー20%に見られる。特にピルを服用し始めた当初に多く、一般的に服用を継続することにより、軽減、消失することが多い。
8 高血圧
 通常、高血圧をきたすことはない。しかしながら、既往、家族歴のある場合注意。
9 皮膚症状
 とくに、にきび、しみ、などが現れる場合がある。

絶対的禁忌

 1 本剤の成分に対し、過敏性素因がある場合
 2 エストロゲン依存性腫瘍(乳ガン、子宮体がん、子宮筋腫)、子宮頚癌並びにその恐れのある者
 3 診断の確定していない異常性器出血のある者
 4 血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害症、冠動脈疾患またはその既往歴のある者
 5 35才以上で1日15本以上喫煙者
 6 血栓性素因のある者
 7 抗リン脂質抗体症候群
 8 手術前4週間、手術後2週間、産後4週間以内の者
 9 重篤な肝障害ある者
10 肝腫瘍
11 脂質代謝異常
12 高血圧(軽度の高血圧は可)
13 耳硬化症
14 妊娠中に黄疸、持続性掻痒症、妊娠ヘルペスの既往のある者
15 妊娠している者
16 授乳婦人
17 思春期前の女性


相対的禁忌

 1 40歳以上
 2 乳ガンの家族歴または乳房に結節のある者
 3 喫煙者
 4 肥満の女性
 5 血栓症の家族歴
 6 軽度の高血圧症
 7 耐糖能の低下している者 
 8 ポリフィリン症
 9 肝障害
10 心疾患、腎疾患ならびにその既往歴のある者
11 テンカン症
12 テタニーのある者


低用量ピルの注意点


1、すり抜け排卵
 低用量ピルは注意して使用しないと1年間に2〜3%の症例が妊娠することもある。
  1)サンデーピルで、初回の服用が周期の6ー7日目になる第一周期。
  2)服用を24時間以上忘れた場合。
  3)下痢などで、薬剤の腸管からの吸収が不十分な場合。
  4)ピルの効果を減弱させる薬剤を服用中の場合
    (リフアンキシン、テトラサイクリン、フエノバルビタール、フエニトインなど)
2、消退出血の欠如
 服薬終了後の、消退出血の欠如が、0.7〜17.7%に認められる。この場合は妊娠の可能性について検査する必要がある。
3、ピルは避妊効果が得られるが、性感染症(STD)予防は出来ない。
 妊娠の心配から開放されても、性感染症の予防にはならず、コンドームの使用が望まれる。性感染症の十分な説明も受けて、ピルの処方をしてもらうべきである。


OCの内分泌撹乱化学物質
(環境ホルモン)
 OCは、合成エストロゲンであるエチニルエストラジオール(ED)を含有する製剤である。これを服用した女性から服用後に排泄される合成エストロゲンの環境及び環境を介した人への影響については、なほ十分に考慮すべき問題である。

1.総排泄量
 通常の女性からのエストラジオール(天然エストロゲン)の分泌量は25〜100μg/dayである。分泌されたエストラジオールは生体中で代謝を受けるが、これらが尿中に排泄される総量(代謝体を含む)は一日数μg〜60μg程度とされている。なお、妊娠時においては、一日200〜400μg程度排泄(妊娠初期)されること、また、男性からも一日数μg排泄されることが報告されている。一方、OCの服用者からのエチニルエストラジオール(合成エストロゲン)の排泄量は、その全てが排泄されるとして、投与一日量である30〜40μgとなり、また、エチニルエストラジオールの血中濃度の上昇に伴い、エストラジオールの血中濃度が減少することが報告されており、実際に排泄される天然及び合成エストロゲンの総量は、通常の女性から排泄されているエストラジオールの量と同程度と考えられる。

2.環境中での消長、存在及び作用
 活性汚泥による天然及び合成エストロゲンの消失率については、エストラジオール(天然エストロゲン)が3週間で100%、エチニルエストラジオール(合成エストロゲン)が4週間で95%との報告もあり、合成エストロゲンの消失が天然エストロゲンに比較して著しく悪いものではない。汚水処理場の排水等から、天然エストロゲン及び合成エストロゲンが共に検出されているが、天然エストロゲン及び合成エストロゲンが生態系に対してどのような作用を及ぼすかは必ずしも明らかではなく、今後これらの物質の検出技術や毒性の評価の進展によっては、適切かつ必要な対応が求められるものと思われる。

3.総括
 エストロゲンについては、天然・合成を問わず総合的に議論すべきものであり、また、内分泌かく乱化学物質の問題は一物質・一企業・一国からのアプローチでは解決が望めないものであることから、国内では各方面で横断的に、国際的にはWHO、OECD等の国際機関において内分泌かく乱化学物質を総体でとらえる視点から調査研究及び対策に取り組まれているところである。また、現時点では、米国及び欧州のOC使用国で環境への影響を理由にOCの使用を禁止した事例の報告はない。しかしながら、今後、そのような総合的な取り組みが進展する中で、個別の問題についての新たな対応が必要となった場合には、適切かつ速やかに対応するという姿勢により臨むことが必要である。

【注意】

厚生省の審議会では下記の如く申し合わせがなされた。

1.第三世代のピル「マーベロン」(日本オルガノン株式会社申請)については、第二世代のピルに比較し血栓症のリスクが2倍とのWHOの疫学調査報告を否定し得ないことや諸外国における対応状況を踏まえ、処方にあたってはその他のピルが適切でないと考えられる場合にのみ投与を考慮する(第一選択薬とはしない)旨を添付文書に盛り込まれるようになった。
2.医師の処方によるほか、医師の処方せんの交付を受けた薬局においてのみ販売等ができる「要処方せん薬」とすること。 処方箋なしでは薬局で売ってくれない。
3.長期間の市販後調査を必要とすることから、再審査期間を10年間とすること。


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