ダウン氏病


Down症候群
 本症候群は,常染色体異常症の中で最も頻度の高い疾患である.染色体異常は,21番染色体のトリソミーが最も頻度が高いが,転座型,モザイク型などもみられる.出生頻度は約1,000人に1人であるが,母親の加齢に伴い発生頻度が上昇することは知られている.以前は先天性心疾患,易感染性などのために短命であると考えられていたが,医学的管理の向上に伴い平均寿命は50歳にまで達している.

診断の告知
 臨床症状より本症の診断は可能であるため,生後早期に告知されることもあるが,染色体検査の結果を待ってなされる場合が多い.告知は可能な限り両親同席のもとで行う.告知の後で,本症の染色体異常,臨床症状と合併症,精神発達,身体発育,今後の育児方針と総合的な療育,遺伝性などについて正確に話す.告知において大切なことは,障害児であると知らされたわが子を両親が受け入れられるような精神的援助を行うことである.

合併
 予想される合併症を検索することはDown症の健康管理にとって大切なことであり,総合的な療育に結び付けるためにも重要なことである.治療法は原則的には,健常児に対する治療と同じであり,治療効果も大きい.

1.循環器疾患
 本症の30〜50%に先天性心疾患を合併している.最も多いのは心室中隔欠損症で,過半数を占めている.動脈管開存症,心内膜床欠損症,心房中隔欠損症,Fallot四徴症などもみられる.管理上注意すべきことは,Down症では肺高血圧症を合併する頻度が高く,その進行が速いことや,乳児期には心雑音がなくても心奇形を合併することがあることなどである.1歳頃までには一度は心電図と胸部X線検査を行うことが望ましい.
2.消化器疾患
 先天性の疾患が殆どで,緊急の手術を必要とすることが多い.十二指腸閉鎖,鎖肛,Hirschsprung病がみられる.
3.悪性腫瘍
 白血病に罹患しやすいことが知られているが,急性骨髄性白血病,急性リンパ性白血病が多い.また,新生児期には白血病との鑑別が必要となる一過性骨髄造血(transient abnormal myelopoiesis:TAM)を認めることもある.
4.神経疾患
 てんかんの合併が知られているが,乳幼児期には,点頭てんかんに注意すべきである.
5.内分泌疾患
 甲状腺疾患の罹患率が高い.特に年長児に不活発,進行する肥満,低体温などが認められた時には自己免疫性甲状腺機能低下症を疑い検査する必要がある.肥満を伴った年長児には,成人型糖尿病の発症に注意する.肥満に対する栄養指導も有効である.
6.整形外科疾患
 頚椎環軸関節の不安定性や亜脱臼が認められることもあるため,3歳頃にはX線検査が必要である.
7.眼科疾患
 屈折異常は殆どの患児に認められ,遠視性乱視,混合乱視,近視性乱視の頻度が高い.白内障の合併も多い.
8.耳鼻科疾患
 滲出性中耳炎の頻度が高い.言葉の遅れが著明な時には聴力検査も必要である.

育児指導と療育
 Down症は,筋緊張が弱いため激しく泣いたり体を動かしたりすることが少ない.発達に応じた刺激や運動が必要であるため,体力が許す限り適当な療育施設へ紹介し,家庭を中心とした療育を行う.
 身体発育はDown症の発育曲線に従って判断すべきで,健常児の発育曲線で判断しない.また,精神発達においても健常児や他のDown症児と比較をせずに個人個人の発達を尊重すべきである.

遺伝相談
 21トリソミーのDown症は成熟分裂での不分離が原因であるため,遺伝性は全く認めない.したがって,核型が転座型でない場合には両親の染色体検査は不要である.転座型の場合は両親の染色体分析を行い保因者診断が必要である.両親のいずれかが保因者の時は,希望があれば出生前診断を行う.親の加齢に従いDown症の発生率が上がるため,高齢妊娠の場合にも出生前診断の適応となる.