血友病
移送の判断基準
【1】頭蓋内出血,気道周囲出血,消化管出血,腸腰筋出血などが疑われるときは,緊急の補充療法と処置が必要である.
【2】DNA診断による保因者診断・出生前診断ならびにvon Willebrand病との鑑別などは,専門医に依頼したほうがよい.
症候の診かた
【1】新生児期は,意外に出血が少ない.5%程度の新生児に,帽状腱膜下血腫・頭血腫・臍帯出血などが見られるにすぎない.先天代謝異常のスクリーニングなどの,足底穿刺採血後の止血困難で発見されることもある.
【2】多くの場合,初めて気付かれる異常は,乳児期の溢血斑(ecchymosis)である.点状出血斑(petechia)を見る時は,むしろ血友病以外を考える(血小板の減少する病気など).はいはいする乳児の肘や膝,あるいは歩行器の輪の当たる胸腹部などに溢血斑を見た場合,男の子ならまず血友病を考える必要がある.
【3】よちよち歩きを開始すると,柱などに額をぶっつけて,1〜2日後に突出するコブ(血腫)を作ったり,転倒して上唇小帯(frenulum)を切って半日以上出血が続いたり,尻餅をついて殿部に血腫を作ったりする.
【4】歩行が盛んになると,関節出血が始まる.足関節が最も多く,膝関節・肘関節がこれに次ぐ.疼痛・腫脹・運動制限が三主徴である.血友病に最も特徴的な出血症状で,患者を一生苦しめる.他の出血性疾患で,関節出血を来すことは,ほとんど無い.
【5】乳歯の脱落する頃,齲歯からの出血が見られる.鼻出血は,風邪などの鼻粘膜の炎症による.
【6】腸腰筋出血・血尿などは,比較的年長児に多い.消化管出血(多くは消化性潰瘍)は,成人の方が多く,小児では稀である.
【7】頭蓋内出血は,血友病患者の約20%が経験している.乳児では90%が,1歳以上では約50%が,見るべき頭部外傷無しに起こっている.
【8】上記は,重症・中等症の出血症状であり,病歴のみにてほぼ診断可能である.軽症例は,手術後の異常出血などで初めて気付かれることも多い.したがって,手術前に下記のようなスクリーニング検査が必要である.
必要な検査とその所見の読み方
【1】プロトロンビン時間正常,活性化部分トロンボプラスチン時間延長.この組み合わせは,血友病Aまたは血友病Bが最も多い.von
Willebrand病で第鯊因子がかなり低下している場合もありうる.極く稀に,第鯆鮖・鯆鮗因子,Fletcher因子(prekallikrein),Fitzgerald因子(HMW
kininogen)などの先天性欠乏症によることがある.
【2】凝固第鯊因子・第鮹因子は,正常人の平均値を100%とする時,血友病では20%以下である.1%未満の重症型は,血友病の約60%を占め,1〜5%の中等症は約35%を占める.なお,正常人は50〜150%に分布する.
治療法
【1】治療の基本は,欠乏した凝固因子の補充療法である.第鯊因子を50U/kg投与すると第鯊因子は100%となり,一時的に正常人と同じとなり,手術も可能である.