羊水検査
羊水には常に分泌と吸収が生じており,動的な貯留液である.その動態は今日でも不明な点が多いが,妊娠後半の時期ではその大部分は胎児の尿によっている.このように,胎児の尿をはじめ,種々の分泌腺からの分泌液(物)や肺などの臓器還流液,あるいは剥離細胞などを混じているため,検体としての羊水には胎児のさまざまな情報が込められているとして格好の検査対象となっている.
測定の意義
羊水検査は特定の胎児病の診断とともに胎児の臓器成熟度を判定するためのものとして臨床で応用される.その範囲は広く,いわば小児や成人における検体検査のほとんどを網羅している.これに対して今日では,新たに胎児採血が試みられ次第に普及しようとしている.また羊水中の細胞成分採取に替わって絨毛採取も行われている.このように,かつての応用範囲がさまがわりしつつあるが,今日でも重要な検査法であることに違いはない.
1) 羊水の量の診断
今日では超音波断層法による推定が最も簡便であるとして,目視的にあるいは最深度を測定して羊水量の異常を診断する.羊水過多や過小では胎児の形態異常を伴う場合があり,また機能異常の診断としても優れている.深度計測では3〜8cmを正常範囲とする場合が多い.
2) 羊水の採取
清潔操作のもとに,安全で確実な羊水採取のために,超音波モニタリングによる羊水穿刺を行う.目的に見合う量の採取を行うとともに,その後の出血などを観察する.
3) 羊水細胞による検査
妊娠14〜20週の間の羊水細胞を培養して行う核型分析が代表的なものである.これをもとに染色体異常の診断を行うほか,培養細胞を用いて酵素活性の測定や蓄積物質の測定など先天性代謝異常の診断を行うことができる.
4) 羊水上清による検査
生化学的,物理化学的分析を行う検体として重要である.羊水中の非細胞成分には多種多様のものが含まれており,妊娠時期によって変動を示す.この中では,糖質,蛋白質,脂質のほか電解質,そして各種のホルモンから酵素にいたるまでが測定の対象となる.これらの物質は胎児生育の生理的な状況を記述するとともに,一方ではその測定により胎児病や胎児異常を診断するのに役立つ.その手技,測定方法,測定値の判定は多岐にわたるので,ここでは測定物質とその意義に限りいくつかを例示するに留める.
α-フェトプロテイン:無脳児などの診断
クレアチニン:胎児腎機能の診断
ビリルビン様色素:胎児溶血性貧血の診断
リン脂質:胎児肺成熟度の診断
5) その他の羊水検査
羊水鏡検査では,子宮頚管に鏡筒を挿入し,卵膜ごしに肉眼的に羊水の性状を観察する.これにより,羊水の色調や胎便による混濁の有無を診断し,ひいては胎児の潜在仮死の診断に役立てる.今日では以前ほど繁用されない.
鏡検による羊水検査としては,破水の有無を診断する際に行う羊歯用結晶の観察をあげる.腟の内容を塗抹乾燥ののち鏡検して結晶の有無を調べると,破水の補助診断として有用な臨床検査の1つである.
羊水診断の応用は,Rh-Incompatibilityにおけるビリルビン用色素の測定(△OD 450)とそれによる治療方針の決定を端緒として,その後,脂肪細胞染色を始め一連の胎児成熟度の判定,そして今日ではさらに各種の臓器機能診断へと次々に応用法が開発され,展開してきている.一方で,細胞遺伝学の研究においても欠くことができないものになっている.しかし,はじめにも述べたように,新たに血液などの採取検体による検査がより正確な胎児の情報を提供するものとしての関心が高まっており,今後急速な変化を生じる分野といえる.