ニュースの理由 脳死移植「家族承諾」相次ぐ
2010.8.20 日本経済新聞社夕刊署名記事 ニュースのわけ
僕はこの記事100%賛成である。もうこれに重ねることは全くないようだ。情報開示に勝るものはない。
手続きの透明性を確保する課題
改正臓器移植法の施行から約1カ月。脳死者からの臓器提供をしやすくした法改正の狙い通り、本人書面でなく、家族の承諾による臓器提供が3例続いた。提供数が大幅に増える見通しのなか、その手続きの透明性を確保する課題が早くも浮かび上がっている。
臓器提供を希望する家族が現れた際、移植や脳死について納得いくまで説明し、承諾を得る人たちが移植コーディネーターだ。脳死移植が決まれば「スポークスパーソン」の役目も担う。8月9日(2010)厚労省の記者会見室、法改正後初の脳死移植についての本臓器移植ネットワークの小中節子医療本部長は臓器提供者(ドナー)の20代男性が提供に意思を口頭で家族に伝えていたと再三、強調した。ただ、その時期や内容などに質問が集まると、「把握していない」「答えられない」の繰り返し。移植コーディネイターが適切に行動したかどうか疑問が残った。本人の意思でなく家族の判断だけで提供が実現した19日(2010.8)の2例目でも歯切れがよくなかった。脳死での臓器提供という選択肢を病院側が持ちかけたかどうかについて1例目とは違い言及はしたが、その具体的な時期は「家族からの要望で申し上げられない」。家族が承諾した詳しい経緯も伏せられた。
情報開示の在り方について、東京大学の赤林朗教授(医療倫理学)は「ドナーや家族を特定出来ないように配慮すればよい。1例目で云うと、いつ、だれに意思を伝えたかなど明かしても良いだろう」と指摘する。臓器移植法は約13年ぶりに抜本的に見直された。平均年10例に満たなかった脳死からの臓器提供を増やすのが狙いで、「年間50例ぐらいに増えるだろう」(日本脳神経外科学会)
一方、この改正で本人が拒んでいない限り、臓器提供と云う重い判断は家族の手に委ねられた。従来は「ドナーカードなどによる本人の書面意思が必要で家族はそれを尊重すればよかった。脳死移植はドナーと家族の善意と脳死を「人の死」と受け入れることにより初めて前に進む。宗教観や人生観から反対・慎重な人も少なくない。だからこそ、臓器提供までの過程が開示されることが一般の人の理解を深めるために欠かせない。
医師は救命に最善を尽くしたか。脳死判定に落ち度はなかったか。家族は本当に納得して承諾したのか。少しでもそこに疑いが生じれば、脳死移植の普及は足踏みする。
移植医療が適切だったかどうかを医師や法学者らが事後的にチェックする厚労省の専門家会議がある。ただ「法改正準備に忙しかった」を理由にこの1年半近く開かれていないという。法改正前の脳死移植の3分の1は未検証のままだ。一刻も早く専門家会議を再開し、検証作業を進めてほしい。今回の3例を前倒ししても良い。移植医療を巡る生きた情報こそ、一人ひとりが脳死移植を自分の身になって考える大切な判断材料になる。(編集委員 矢野寿彦)
2010.8.29 現在改正移植法成立後本人意思表示なしで脳死判定は5例に達した模様。相変わらず詳細は公開されず闇の中。情報公開以外に今後の発展の道は開けないと思うのであるが。
(文中敬称略)