結婚と遺伝学(いとこ同士の結婚について)
無作為でない結婚には選択結婚と近親結婚とがある。選択結婚とは、ある形質の保有者同士が、偶然よりは有意に多く、または少なく結婚することで、子への遺伝的影響はその形質の関与する遺伝子座位に生ずるにすぎない。一方、近親結婚とは祖先を共有するもの同士の結婚で、子のすべての遺伝子座位でホモ接合性を高め、ヘテロ接合性を減ずる。このため病的な単劣性遺伝子(劣性遺伝疾患例)の効果を発現せしめ、淘汰圧に暴露する作用を持つ。
近親結婚の頻度は時代、地域、社会階層によって異なり、一般に都会で低く、僻地で高い。近親交配の程度は近交係数によって表される。父母に血縁関係があれば、ある個体Indのもつ相同遺伝子はともに共通の祖先遺伝子に由来したかも知れない。このことの起こる確率がIndの近交係数でαで表す。他人結婚ではα=0、植物の自家受精ではα=1である。一般にIndの共通の祖先の一人をJとし、JからIndの父までにmj世代、母までにnj世代経過したとすると、
α1=Σ(1/2)mj+nj+1
たとえば、いとこ結婚では祖父母が共通であるから、α=2x(1/2)2+2+1=1/16である。いとこ半結婚ではα=1/32、またいとこ結婚では1/64である。
近親結婚からホモ結合体が生ずる確率は下記のごとく計算する。
対立遺伝子A,aの頻度がp,qでAがaにたいして優性であるとする。Indがaaになるにはaが共通の祖先から由来する場合と、別々の祖先に由来する場合がある。いとこ結婚を例にとると、前者の確率はqx(1/16)、後者の確率はqxq(1ー1/16)、求める確率はこれらを加えてq/16+15q2/16となる。一般にIndの近交係数がαなら、Indがaaである確率はαq+(1-α)q2で、集団の近交係数がαなら、これは集団内のaa個体の頻度にほかならない。
さて、任意交配では集団内のaa個体の頻度はqxqであるから「αq+(1-α)q2=αpqは近交のよる増加分である。もちろん、このときAA個体もαpqだけ増し,Aa個体は2αpqだけ減る。
つぎに、いとこ結婚でaa個体が生まれる確率と、任意交配における確率の比は、q(1+15q)/16/q2=15/16+1/16q で、qが小さければ、これは著しく大きな値となる。この比は、いとこ結婚からまれな単劣性遺伝性疾患が生ずる危険が、他人結婚に対してどれほど大きいかを示す尺度を与える。