整形外科疾患の管理と指導


 小児整形外科領域における重要疾患とされてきた先天性股関節脱臼,内反足,細菌性関節炎などはその診療上の重要性については従来と同様であるが,近年その頻度は減少しており疾患の構成に変化がみられる.代ってスポーツ活動による外傷や障害が増加しているので以下に概略する.

 スポーツ外傷とはスポーツ活動が原因となる事故であるが,単純な打撲や挫傷の他にプライマリケアが特に重要なものが数多く存在する.

骨折

1.肘関節周辺

 上腕骨顆上骨折,上腕骨外顆骨折,橈骨頭骨折などが問題で,骨折の整復固定が不完全であると変形治癒や関節機能障害が発生しやすい.これらの肘関節周辺骨折に対しては,小児といえども観血的整復固定が必要な場合が多い.

2.膝関節や足関節

 小児では外傷機転により骨端線離開や骨折に伴う成長軟骨損傷が発生しやすい.圧痛が成長軟骨に存在する場合には,関節に外反や内反などのストレスをかけてX線検査を行い,骨端軟骨線が開大しないかどうかを検査する必要がある.小児の靭帯損傷は成人に比べて少ないが,膝関節の前十字靭帯損傷は放置すると半月損傷や関節軟骨損傷を起し,関節破壊につながるもので,受傷初期の的確な診断と治療が重要である.

 膝関節内の軟部組織の外傷は従来より膝内障と総称されてきたが,近年の関節鏡検査法の発達により靭帯損傷,半月損傷,軟骨損傷などと細分されてきており,さらに関節鏡視下に手術を行うことによって,手術侵襲を極力小さくし,術後早期からのリハビリテーションが可能となった.また症状が外傷に類似しているもので,関節鏡検査を行うと関節内に発生した初期の腫瘍を発見することもある.

骨傷のない関節外傷

 従来より広義の「捻挫」として取扱われてきたが,その中には初期治療がとりわけ重要であるものが存在するため整形外科における専門的診療が必要である.特に関節外傷で腫脹や血腫の存在するものに対しては,X線検査にて骨傷がないということで放置してはならない.

小児期に多い膝関節疾患

 外側内板状半月板があげられる.これは膝関節の外側半月の形態が通常の三日月状ではなく円板状であるため損傷されやすいもので,通常外傷機転が軽微にもかかわらず,膝の完全伸展が不能となり膝関節外側に疼痛を訴える.保存的治療は無効で,関節鏡視下の半月切除を行う.

思春期の膝外傷

 膝蓋骨脱臼・亜脱臼があげられる.単純な外傷性の膝蓋骨脱臼は極めて稀で,その大多数は膝蓋大腿関節の適合性に問題があって膝蓋骨が亜脱臼位にある児童・生徒に発生するものである.また膝蓋骨が完全に脱臼することはむしろ少なく,跳び箱の着地時や反復横跳びで脚を踏ん張った時に膝が 「ガクッ」 となったという膝くずれを訴える.膝蓋骨亜脱臼による膝くずれは自己の大腿四頭筋の収縮によって発生し,衝突などの外力の作用は少ない.膝くずれを反復すると非可逆的な膝蓋軟骨損傷が起り,膝関節機能が障害されるため,発症早期の診断が重要である.

 膝蓋骨の位置異常を視診にて判断することは困難で,簡便な診断法としては患児を机に座らせて下腿を自然に下垂させた状態から能動的に膝関節の伸展を命じ,膝が完全伸展近くまで伸びた付近で膝蓋骨が外側に傾斜し移動するのを触知する方法がある(APS test).またCTにて膝関節の横断像を撮影すると膝蓋骨が亜脱臼位にあるのが判明する.CT検査による亜脱臼の程度が軽度のものに対しては日常生活動作の指導による保存的治療を行う.膝くずれを反復するものには手術が必要である.

種々のスポーツ障害

 スポーツ障害はスポーツにて反復動作を繰返すことにより発生するもので,野球肘,テニス肘,ジャンパー膝などと競技種目の名前が付いているものが多い.その多くは過剰な練習によって生じるもので,野球肘では投球動作を反復することにより,尺側側副靭帯および前腕屈筋筋膜の過伸展による肘内側の疼痛と,外側関節面の過圧迫による関節軟骨損傷による痛みを訴える.進行すると関節内に遊離体を生じ関節機能が障害される.

 水泳選手では運動による上肢の負担が大きく,肩の過剰な使用により肩峰下滑液包炎,腱板損傷を生じやすい.

 陸上クラブやサッカー,バレーボール,バスケットボールの選手では下肢の障害が多く,膝蓋腱炎(ジャンパー膝)や下腿の疲労骨折が多い.また肥満の児童が急に運動をすることによる疲労骨折もみられる.疲労骨折はX線検査にて骨の吸収像と新生像が存在するため,骨腫瘍に類似した像を呈することがある.成長軟骨帯が損傷されることもあり膝周辺の骨端症として大腿四頭筋腱の付着部の疼痛と隆起が起る.Osgood-Schlatter病は頻度が高い.

スポーツ障害の成因

 過剰な練習によるものが多いが,四肢のアライメント異常によって障害を起しやすい体型の患者も存在し,このような患者には練習方法の指導とともに,装具療法を併用しなければならない.また体の柔軟性が不足している患児では,ストレス集中による腰痛などの障害もある.スポーツ障害の原因には長時間にわたる偏ったトレーニング,精神主義と過剰な期待,ストレッチング不足,運動用具の不備,練習場の床の問題など様々な問題が存在するため,患者本人のみならず両親やクラブのコーチにも,状態と原因を説明する必要がある.



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