米国での新薬ブーム
日本ではバイアグラの承認申請が厚生省に出され(4/7/89)、早ければ99年春には認可されるという。普通一般には今後何年もかかるそうだが、今回は米国でのフィールド実験の結果を参照して(資料として認める)数カ月単位で認可されると言う。
米国は今、新薬ブームである。その筆頭が、インポテンツ(性的不能)治療薬の「 バイアグラ 」だろう。 製薬メーカーのファイザーが3月に販売を始めてからというもの、空前のヒット商品になった。
毎日5、6万人分の新しい処方せんが出され、 バイアグラ の服用者はうなぎ登りだ。エイズ新薬は申請から認可まで2.6カ月の最短記録であった。
ガンやエイズでも新薬が出たり、実験段階での画期的成果が公表され、そこで紹介された製薬メーカーやバイオテクノロジー会社の株が格好の投機対象になっている。こういった新薬ブームを演出しているのが、米食品医薬局(FDA)だ。
新薬の承認スピードを上げるための改革が実を結んでいるからだが、どれだけ承認スピードが速くなったのか。 昨年1年間に承認された新薬の平均承認時間は14.4カ月で、1980年代後半には平均30カ月かかっていたので、承認期間を半減させたわけだ。
承認新薬数は95年の82から翌年には131と100の大台に乗せた。
ガンやエイズといった優先順位が最も高い新薬だけとると、昨年9つの薬が認められているが、その承認期間は6カ月以内だ。 あるエイズ新薬は、2.6カ月という超最速の承認スピード記録を樹立している。 FDAは「期間短縮によって数百万人の命が救われた」と豪語している。
FDAでどんな改革が行われたのか。タネも仕掛けも、ちゃんと法律で用意していた。 改革の出発点をたどれば、92年にさかのぼる。 この年、「処方薬使用者手数料法」なる変わった名前の法律が成立している。
当時、米国は不況の真っ最中。 米政府は「小さな政府」を目指し、連邦政府職員の数を大幅に削減していた時代だ。 FDAも、例外ではない。 一方で、新薬の承認スピードは、患者の生き死にを左右する重大な問題である。 小さな政府を目指すからといって、新薬検査官の数まで減らしたら、結果的には患者を見殺しにすることになる。
そこで絞った知恵が「使用者手数料」だ。製薬会社が新薬の承認を早めさせるために一定額を払い、FDAはそのカネで新薬検査官を増員する。民間のカネで職員を増やそうという発想だ。1億〜2億ドルに及ぶ手数料の収入増によって、FDAは新薬検査官を600〜700人増やすことができた。 検査官総数の3分の1に当たる新規増員数だ。 これによって、承認期間を半分に短縮することに成功したわけだ。
承認スピードの問題には、ますます注目が集まっている。最近、ガンを治癒できる新薬をボストンの医師が見つけた。しかし、ネズミの実験段階での話だ。今後、実験を3段階にわたって繰り返した後、FDAの承認検査が必要だ。人間の薬として認められるには、6年以上の月日を要する。「FDAの承認スピードをもっと速めれば、助かる人が増える」という論調が医学界で指摘されている。もともと、処方薬使用者手数料法は、5年間の時限立法だった。承認期間を目標通りに短くできなければ、法律を廃棄するためだ。そして、昨年末にこの法律が更新された。承認スピードの更新圧力はますます高まっているため、FDAは「今後、一般新薬の承認期間を99年に10カ月にまで短縮する」と新しい目標を立てている。
反面、製薬業者のうえにのっかてしまい、言いなりになっている傾向も見受けられる。常識的にいってあまり効きそうでない薬まで承認されるようでは、FDAも反省しなければならないだろう。FDAホントにその効果を保証し得るのだろうか?毒にも薬にもならない薬は無制限に野放しにならないだろうか。FDAに操られた新薬騒動収まりそうにもない。
【レベルが低い日本での導入論議】
さて、「この制度を日本にも導入できないか」と厚生省に提案した製薬メーカーもあるが、多くのメーカーは懐疑的だという。 「厚生省が焼け太りするだけだ、という疑心暗鬼がぬぐい去れないためだ」と業界関係者は説明する。
どうも議論のレベルが低すぎるのではないか。 ヒトの生き死にを前にしては不謹慎きわまりない。