自動巻き時計


 機械式時計は機械的なエネルギーによって動いているので、それを供給してやらなければ動きません。手捲式ではリュウズを手で捲くことにより香箱という歯車付ケースの中に収められた発条を巻き上げ、その金属のたわみとしてエネルギーを貯えます。リュウズを捲き忘れると、そのうち時計は止まってしまいます。今日ではリュウズを捲くのが嫌ならクォーツ式にするという選択もありますが、機械式しかなかった時代の人にとって、リュウズを捲かなくとも永久に動きつづける時計は一つの夢でした。

 最初の自動巻機構は、1770年、スイスのル・ロックルに住むアブラハム・ルイ・ペルレにより開発されました。これは既に、今日主流となっている、360度自由に回転する回転錘の運動によりエネルギーを取り出すメカニズムを備えていました。しかし、時代が時代なのでこの機構が搭載されたのは腕時計ではなく、懐中時計でした。懐中時計は通常、ポケットに入れられているため、腕時計ほど多くの運動モーメントを得ることができません。そのためこの方式の懐中時計は普及することなく終わりました。それから10年後、ブレゲは上下運動する錘を採用したメカニズムを作りました。こちらのほうが懐中時計に適していたようですが、これもあまり普及することはありませんでした。

 今世紀に入り、腕時計が普及しはじめると、忘れ去られようとしていた自動巻機構に復活の機会が訪れました。1920年、イギリスの時計職人ジョン・ハーウッドは、ルイ・ペルレのものと同じく回転錘による自動巻機構を備えた腕時計を開発しました。ただしこれは回転錘の回転する範囲が130度に制限されていました。これを半回転式といい、それに対してルイ・ペルレの時計のように回転錘が360度回転するものを全回転式といいます。その後1931年、 ROLEXが全回転式の自動巻機構を採用し、それ以後この方式が自動巻の主流となり、今日に至っています。

 最近SEIKOが開発した発電機構、AGS(英語名 SEIKO KINETIC)も、同じ様に全回転式の回転錘を備えています(ついでながら、一般の自動巻では回転錘=ローターですが、AGSではローターというとより発電機に近い、高速回転部分を意味するようです)。


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