リマの街角


 リマでは着用している腕時計どころか履いているブーツも盗まれると言うはなしである。ツアーの百戦錬磨の添乗員が博物館のまえで、はめている腕時計を盗まれたという。いずれにしてもリマの街は大変物騒だ。ホテルの出口でガードマンに注意を受けた。カメラの手持ち、腕時計、胸のアクセサリーはダメだと。ホテルクリオンからサンマルティン公園まではほんの数百メートル、縁日の屋台のような店は数メートルの間隔で立ち並び、店と店の間にも大勢の人がたむろしている。店屋では古い貨幣(弊価切り下げ前の古い貨幣)の束(2〜3cmの厚さ)がお土産用に売られていた。1.000.000円札をみたのも、ここペルーが最初だった。たむろしている連中はすべて闇ドル買いの人達であった。年率数百%の割合で貨幣価値が下落するので誰もがドルをほしがる。闇両替といっても、何も陰気な雰囲気もなく、南米の陽気な気質まるだし、それにしてもヤミドル買いの数が多すぎる。これでも結構商売になっているのだろうか、老若男女を問わずである。この一角で突然一人の若い男がぶち当たった。一瞬何が起こったのか理解できず、次の瞬間みぎのズボンのポケットに入れていたハンカチが無理矢理奪取されたと気づくまでしばらくの空白の時間を要した。ズボンのポケットに入れたハンカチがすこし膨らみを持っていたのであろう。白昼ほんとに恐い。これでは、はめている腕時計が盗まれるのも、なるほどと頷けられる。大事なものが入っていなくても盗られやすい格好で歩くのは狙ってくださいといっているようなもので、街を歩いている時はいつも誰かに狙われていると思うくらいがちょうどいいのである。
 レストランに行った。レストランの入り口は言うに及ばず、その建物の屋根の上にも、見張り小屋がつくられており軽機関銃で装備したガードマンが常駐していた。我々客を招き入れると、すぐ玄関をロックする。東南アジアの土産物店でお客が入れば鍵するのとは意味あいが違う。レストランのお客さんは金持ちが多いので、強盗にはいるにしても効率がよいらしい。もちろん日夜なんて関係ない話だ。個人の住宅も警戒が厳重だった。高い塀には有刺鉄線を張り巡らせ、その上高圧電流を流している。個別のガードマンを雇用しているのは普通の状態で何も特別の処置ではないようだった。
 早々にホテルに引き上げたが、クリオンのホテルのロビーで北海道から来られた老夫婦が、やはりサンマルティン付近で数人組に襲われ、ハンドバックから懐中もの一切全て強奪されたという。真っ昼間の出来事であり、無一文、スッカラカンという。お金は2〜3日で銀行振り込みされると言うが、今日リマに着いたとかなのに、パスポート(出国証明)の手配の出来次第帰国するという。リマでは履いている靴、身につけている時計は勿論、指輪・イヤリングは言うに及ばず、何でも盗まれる。ゲバルトでやられる。

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