登山列車は往く(初めてのスイス訪問)


 ベルナー・オーベルランド(BERNER OBERLAD)とはベルン高原ぐらいの意味で、蒼く澄みきった山の湖、緑の牧場、そして万年雪のアルプス、自然の雄大さが心を魅了してしまう。ここインターラーケン(INTER LAKEN)も、ドイツ語の苦手な次郎さんでも、言葉だけで理解できる、なんだか浮き浮きしてくる。ブリエンツ湖とトゥーン湖の間に挟まったインターラーケンの街は塵一つなく全く綺麗で、スイスを代表する綺麗な街の一つに違いない。道路の両脇は樹木も立派で沢山見られ、深々とした緑の草でおおわれいる。一年中緑なしているのだろうか。勿論冬には真っ白な雪に覆われるに違いない。

 ユングフラウ地域の登山列車は元々独立した私有鉄道だったが、いまでは統合され地域鉄道会社となり総延長70kmに達する鉄道網を経営している。ユングフラウヨッホへは、通常東駅からグルンデルヴァルト、クライネシャデック(2061m)から7Kmでヨッホに達する鉄道をえらび、帰りはヴェンデン、ラオターブルネンを経由するコースが最も一般である。ヨッホ駅(3454m)ではスフィンクステラス(3573m)にもエレベータでいけるが高山病には注意が要する。このテラスからの360゜展望がほんとにブンデルバール、初めての4000m体験は夢の中で、白一色の雪と深い青の氷河、黒と黄色のアルプス鴉、紺碧の青空だけであった。これが4000mの初体験だった。ヨーロッパアルプスを構成するドイツ、フランス、イタリアの山々まで見渡す広大なパノラマと、万年雪の巨大な氷河が眼前に広がる。

 ユングフラウとはドイツ語で乙女の意味だというが、万年雪を頂いたこの若き乙女、気高く近寄り難いおもむきがある。ユングフラウ峰からメンヒ、アイガー峰と続く稜線は、ヨーロッパ大陸の分水嶺だ。一方に積もった雪はライン河を経て北海へ、他方はローヌ河から地中海へと注ぐという。
 ユングフラウ(4158m)、ユングフルメンヒ(4099m)、ジルベルホルン(3785m)はすぐそこ、手を伸ばせば届きそうで、ハイヒールと革靴でなければ這ってでも行きたかった。ヨッホへの途中2回ばかりのぞき窓があり、降車してのぞき込むことが出来たが、生涯忘れ得ぬ風景である。こんな北壁ぐらい僕でも挑戦できそうだが?山はそんなにあまくないよね。

 グルンデルヴァルトからの、アイガー北壁を含む絵画は世界最高、これほどのものはほかにない。その衝立は朝日で霧を巻き込んだ銀色の輝きを見せ、氷河は鏡のように光り、夕日には燃えるように真っ赤に輝く。北壁は生きているのだ、黒褐色の岩だけでない、24時間その姿を変え、色を変える。長く連結された、登山列車はまるで、箱庭の中のおもちゃの列車の如くのぼっていく。ウーンと唸って何の言葉もでてこない。もし許されるならば、いつまでも、何日も、このホテルのテラスでボケーと何にも考えないで過ごしてみたい。

 人間の歴史とは違う、もっと単位の大きな時間が、ゆっくりと目の前を流れているようだ。自分がひどく小さくなってしまった感じでもある。

昔、学生時代チンネ(剣岳)に登ったことがある。勿論一番初級クラスのAクラックBルンゼのコースだった。この時からアイガーの北壁のことを夢みていた。初めて本場アルプスの壁を直に見たのだ。




スイスの休日


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